スコット・トゥローさん(島田雄貴)

島田雄貴リーガルオフィス代表の島田雄貴です。映画としても大ヒットした「推定無罪」などのサスペンス小説で有名な米国のベストセラー作家、スコット・トゥローさんのインタビュー記事を紹介します。

「推定無罪」の作者

「推定無罪」など法廷を舞台にしたサスペンス小説で有名な米国のベストセラー作家、スコット・トゥローさん(60)は今も弁護士として地元イリノイ州シカゴの法廷に立っています。

スコット・トゥローさんの変心

「推定無罪」など法廷を舞台にしたサスペンス小説で有名な米国のベストセラー作家、スコット・トゥローさん(60)は今も弁護士として地元イリノイ州シカゴの法廷に立っています。

500件以上の殺人事件の資料と判

トゥローさんは2002年、イリノイ州が設置した死刑諮問委員会に参加、極刑について考え続けました。「500件以上の殺人事件の資料と判決を読み、死刑とそれ以外の判決を分ける基準を説明できないとわかった」

ヘルナンデス元死刑囚の弁護を担当

トゥローさんは、以前は死刑について深く考えていませんでした。連邦検察官だった1984年、友人の検事が担当した事件で、求刑通り死刑判決が出たことを喜んだ記憶もあります。しかし1990年、ヘルナンデス元死刑囚の弁護を担当し、死刑に疑問を抱くようになりました。

死刑判決の後、真犯人が判明

ヘルナンデス元死刑囚は1983年の少女誘拐、暴行殺人事件で死刑判決を受けました。一時は容疑を認め、その後、否認。結局、真犯人が判明し1995年に釈放されました。「死刑になる可能性がある場合でも、やっていない罪を認めてしまう者がいることに驚いた」

冤罪が次々と明らかに

その後、イリノイ州で死刑囚の冤罪(えんざい)が次々に明らかになり、トゥローさんはヘルナンデス元死刑囚が例外でないと実感しました。無実の者を死刑にする危険や、人種・性別によって死刑判決の出やすさに差があることもわかり、今は死刑に反対しています。

米連邦最高裁の1987年の違憲判断
遺族感情は配慮すべきでない

一方、トゥローさんにとって「犠牲者遺族の感情にどう応えるのか」は諮問委でも大きな課題でした。米国では裁判所も判断が揺れています。アメリカ連邦最高裁は1987年、死刑判決について、被害者や遺族の発言を量刑に影響させることを違憲と判断。あくまで犯罪や前歴を基に決定すべきだとの考えを示しました。

4年後に「合憲」に

しかし、連邦最高裁は4年後に判断を覆し、遺族感情の考慮を合憲としました。

50件の殺人事件のうち死刑判決は1件

トゥローさんは「イリノイ州では50件の殺人事件のうち死刑判決が出るのはたった1件。98%の事件で遺族感情は死刑判決に反映されない。死刑を求刑するため、検察が遺族感情を利用しているように思う」と話します。

ノンフィクション作品「極刑」

ただ、傷ついた被害者や悲しみにくれる遺族への対応に改善すべき点は多いです。トゥローさんは、自身としては珍しいノンフィクション作品「極刑」にこう書きます。「警察は犯行現場には群がるが、遺族に死亡証明書の入手方法を教える者はいない」。死刑以外の方法で、遺族の悲しみをやわらげることが大切だと考えています。